特殊健康診断
目次
じん肺健康診断(じん肺法 第3条、第7~第9条の2)
法令で定められた24の粉じん作業に従事または従事した労働者に対しては、就業時、定期、定期外、離職時に健康診断を行わなければなりません。
法令で定められた24の粉じん作業
- 土石、岩石又は鉱物(以下「鉱物等」という。)(湿潤な土石を除く。)を掘削する場所における作業(次号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。
- 坑外の、鉱物等を湿式により試錐(すい)する場所における作業
- 屋外の、鉱物等を動力又は発破によらないで掘削する場所における作業
- 一の二、ずい道等(ずい道及びたて坑以外の坑(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)第二条に規定する岩石の採取のためのものを除く。)をいう。以下同じ。)の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、鉱物等を掘削する場所における作業
- 鉱物等(湿潤なものを除く。)を積載した車の荷台をくつがえし、又は傾けることにより鉱物等(湿潤なものを除く。)を積み卸す場所における作業(次号、第三号の二、第九号又は第十八号に掲げる作業を除く。)
- 坑内の、鉱物等を破砕し、粉砕し、ふるいわけ、積み込み、又は積み卸す場所における作業(次号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。
- 湿潤な鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業
- 水の中で破砕し、粉砕し、又はふるいわける場所における作業
- 設備による注水をしながらふるいわける場所における作業
- 三の二、ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、鉱物等を積み込み、又は積み卸す場所における作業
- 坑内において鉱物等(湿潤なものを除く。)を運搬する作業。ただし、鉱物等を積載した車を牽(けん)引する機関車を運転する作業を除く。
- 坑内の、鉱物等(湿潤なものを除く。)を充てんし、又は岩粉を散布する場所における作業(次号に掲げる作業を除く。)
- 五の二、ずい道等の内部の、ずい道等の建設の作業のうち、コンクリート等を吹き付ける場所における作業
- 五の三、坑内であつて、第一号から第三号の二まで又は前二号に規定する場所に近接する場所において、粉じんが付着し、又はたい積した機械設備又は電気設備を移設し、撤去し、点検し、又は補修する作業
- 岩石又は鉱物を裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業(第十三号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。
- 火炎を用いて裁断し、又は仕上げする場所における作業
- 設備による注水又は注油をしながら、裁断し、彫り、又は仕上げする場所における作業
- 研ま材の吹き付けにより研まし、又は研ま材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研まし、若しくはばり取りし、若しくは金属を裁断する場所における作業(前号に掲げる作業を除く。)。ただし、設備による注水又は注油をしながら、研ま材を用いて動力により、岩石、鉱物若しくは金属を研まし、若しくはばり取りし、又は金属を裁断する場所における作業を除く。
- 鉱物等、炭素を主成分とする原料(以下「炭素原料」という。)又はアルミニウムはくを動力により破砕し、粉砕し、又はふるいわける場所における作業(第三号、第十五号又は第十九号に掲げる作業を除く。)。ただし、次に掲げる作業を除く。
- 水又は油の中で動力により破砕し、粉砕し、又はふるいわける場所における作業
- 設備による注水又は注油をしながら、鉱物等又は炭素原料を動力によりふるいわける場所における作業
- 屋外の、設備による注水又は注油をしながら、鉱物等又は炭素原料を動力により破砕し又は粉砕する場所における作業
- セメント、フライアッシュ又は粉状の鉱石、炭素原料若しくは炭素製品を乾燥し、袋詰めし、積み込み、又は積み卸す場所における作業(第三号、第三号の二、第十六号又は第十八号に掲げる作業を除く。)
- 粉状のアルミニウム又は酸化チタンを袋詰めする場所における作業
- 粉状の鉱石又は炭素原料を原料又は材料として使用する物を製造し、又は加工する工程において、粉状の鉱石、炭素原料又はこれらを含む物を混合し、混入し、又は散布する場所における作業(次号から第十四号までに掲げる作業を除く。)
- ガラス又はほうろうを製造する工程において、原料を混合する場所における作業又は原料若しくは調合物を溶解炉に投げ入れる作業。ただし、水の中で原料を混合する場所における作業を除く。
- 陶磁器、耐火物、けいそう土製品又は研ま材を製造する工程において、原料を混合し、若しくは成形し、原料若しくは半製品を乾燥し、半製品を台車に積み込み、若しくは半製品若しくは製品を台車から積み卸し、仕上げし、若しくは荷造りする場所における作業又はかまの内部に立ち入る作業。ただし、次に掲げる作業を除く。
- 陶磁器を製造する工程において、原料を流し込み成形し、半製品を生仕上げし、又は製品を荷造りする場所における作業
- 水の中で原料を混合する場所における作業
- 炭素製品を製造する工程において、炭素原料を混合し、若しくは成形し、半製品を炉詰めし、又は半製品若しくは製品を炉出しし、若しくは仕上げする場所における作業。ただし、水の中で原料を混合する場所における作業を除く。
- 砂型を用いて鋳物を製造する工程において、砂型をこわし、砂落としし、砂を再生し、砂を混練し、又は鋳ばり等を削り取る場所における作業(第七号に掲げる作業を除く。)。ただし、設備による注水若しくは注油をしながら、又は水若しくは油の中で、砂を再生する場所における作業を除く。
- 鉱物等(湿潤なものを除く。)を運搬する船舶の船倉内で鉱物等(湿潤なものを除く。)をかき落とし、又はかき集める作業
- 金属その他無機物を製錬し、又は溶融する工程において、土石又は鉱物を開放炉に投げ入れ、焼結し、湯出しし、又は鋳込みする場所における作業。ただし、転炉から湯出しし、又は金型に鋳込みする場所における作業を除く。
- 粉状の鉱物を燃焼する工程又は金属その他無機物を製錬し、若しくは溶融する工程において、炉、煙道、煙突等に付着し、若しくはたい積した鉱さい又は灰をかき落とし、かき集め、積み込み、積み卸し、又は容器に入れる場所における作業
- 耐火物を用いてかま、炉等を築造し、若しくは修理し、又は耐火物を用いたかま、炉等を解体し、若しくは破砕する作業
- 屋内、坑内又はタンク、船舶、管、車両等の内部において、金属を溶断し、アーク溶接し、又はアークを用いてガウジングする作業
- 金属を溶射する場所における作業
- 染土の付着した藺(い)草を庫(くら)入れし、庫(くら)出しし、選別調整し、又は製織する場所における作業
- 長大ずい道(著しく長いずい道であつて、厚生労働大臣が指定するものをいう。)の内部の、ホッパー車からバラストを取り卸し、又はマルチプルタイタンパーにより道床をつき固める場所における作業
- 石綿をときほぐし、合剤し、紡績し、紡織し、吹き付けし、積み込み、若しくは積み卸し、又は石綿製品を積層し、縫い合わせ、切断し、研まし、仕上げし、若しくは包装する場所における作業
検査項目
- 診察・問診
- 粉じん作業についての職歴
- 呼吸器
- 胸部X線直接撮影
- 一定の要件をみたす方および医師が必要と認めたときに行う検査
-
- 胸部に関する臨床検査
- 既往歴、胸部の自覚症状、他覚症状(所見)
- 肺機能
- (一側の肺野の1/3を超えるじん肺による大陰影の認められる者と合併症のある者を除く)
- 【一次検査】スパイロメトリーおよびフローボリューム曲線による検査
- 【二次検査】動脈血ガスを分析する検査(二次検査は所定の要件を満たす場合のみ)
- 結核精密検査
- (結核またはその疑いのある者)
- 結核菌検査
- X線特殊撮影による検査
- 赤血球沈降速度検査
- ツベルクリン反応検査
※医師が必要でないと認める場合は一部の検査を省略することができます。
- その他の検査
- (結核またはその疑いのある者)
- 結核菌検査
- X線特殊撮影による検査
有機溶剤健康診断(有機溶剤中毒予防規則 第29条)
法令で定められた有機溶剤業務に従事する労働者に対しては、雇入れ時、当該業務への配置換え時およびその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に健康診断を行わなければなりません。
検査項目
必ず実施しなければならない項目
- 業務の経歴の調査
-
- 有機溶剤による健康障害の既往歴の調査
- 有機溶剤による自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査
- 有機溶剤による(5)~(8)及び(10)~(13)に掲げる既往の異常所見の有無の調査
- (4)の既往の検査結果の調査
- 自覚症状または他覚症状の有無の検査
- 尿中の有機溶剤の代謝物量の検査
- 尿中の蛋白の有無の検査
- 肝機能検査(GOT,GPT,γ-GTP)
- 貧血検査(血色素量、赤血球数)
- 眼底検査
※(4)の検査については、年2回の検査のうち1回については医師の判断で省略することができます。 ※このうち(4)及び(6)~(8)は、下記表に示した有機溶剤に限る。
医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目
- 作業条件の検査
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 腎機能検査(尿中の蛋白の有無の検査を除く。)
- 神経内科学的検査
自覚症状または他覚症状については、医師が次の項目のすべてをチェックしなければなりません。
- 頭重
- 頭痛
- めまい
- 悪心
- 嘔吐
- 食欲不振
- 腹痛
- 体重減少
- 心悸亢進
- 不眠
- 不安
- 焦燥感
- 集中力の低下
- 振戦
- 上気道又は眼の刺激症状
- 皮膚又は粘膜の異常
- 四肢末端部の疼痛
- 知覚異常
- 握力減退
- 膝蓋腱・アキレス腱反射異常
- 視力低下
- その他
代謝物の量の検査、肝機能検査、貧血検査、眼底検査を実施しなければならない有機溶剤
有機溶剤の種類 | 検査項目 | |||
---|---|---|---|---|
尿中の代謝物の量 | 肝機能 | 貧血 | 眼底 | |
既往の検査結果の調査を含む | 既往の異常所見の有無を含む | |||
キシレン、スチレン、トルエンl・l・l-トリクロルエタンノルマヘキサン | ● | |||
N・N-ジメチルホルムアミド、トリクロルエチレン、テトラクロルエチレン | ● | ● | ||
クロルベンゼン、オルトジクロルベンゼン、クロロホルム、四塩化炭素1・4-ジオキサン、1・2-ジクロルエタン、1・2-ジクロルエチレン、I・I・2・2-テトラクロルエタン、クレゾール | ● | |||
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコール、 モノブチルエーテル、エチレングリコール、モノメチルエーテル | ● | |||
二硫化炭素 | ● |
上記指定の有機溶剤が5%を超えて含有されている物質を製造または取り扱う場合にも検査が必要です。
尿中の代謝物の量の検査内容
対象物質名 | 検査内容 |
---|---|
キシレン | 尿中メチル馬尿酸 |
スチレン | 尿中マンデル酸 |
トルエン | 尿中馬尿酸 |
I・I・I-トリクロルエタン | 尿中トリクロル酢酸または総三塩化物 |
ノルマルヘキサン | 尿中2・5-ヘキサンジオン |
N・N-ジメチルホルムアミド | 尿中N-メチルホルムアミド |
トリクロルエチレン | 尿中トリクロル酢酸または総三塩化物 |
テトラクロルエチレン | 尿中トリクロル酢酸または総三塩化物 |
鉛健康診断(鉛中毒予防規則第53条)
法令で定められた鉛業務に従事する労働者に対しては、雇入れ時、当該業務への配置換え時およびその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に健康診断を行わなければなりません。
検査項目
必ず実施しなければならない項目
- 業務の経歴の調査
-
- 鉛による自覚症状および他覚症状の既往歴の調査
- 血液中の鉛の量および尿中デルタアミノレブリン酸の量の既往の検査結果の調査
- 自覚症状または他覚症状の有無の検査
- 血液中の鉛の量の検査
- 尿中デルタアミノレブリン酸の量の検査
※(4)、(5)の検査については、年2回の検査のうち1回については医師の判断で省略することができます。
医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目
- 作業条件の検査
- 貧血検査
- 肝機能検査
- 赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査
- 経内科学的検査
自覚症状または他覚症状については、医師が次の項目のすべてをチェックしなければなりません。
- 食欲不振、便秘、腹部不快感、腹部の疼痛等消化器症状
- 四肢の伸筋麻痺または知覚異常等の末梢神経症状
- 関節痛
- 筋肉痛
- 蒼白
- 易疲労感
- 倦怠感
- 睡眠障害
- 焦燥感
- その他
電離放射線健康診断(電離放射線障害防止規則第56条)
放射線業務に従事し管理区域に立ち入る労働者に対しては、雇入れ時、当該業務への配置換え時およびその後6ヶ月以内ごとに1回、定期に健康診断を行わなければなりません。
検査項目
- 被爆歴の有無の調査
- 白血球数および白血球百分率の検査
- 赤血球数、血色素量またはヘマトクリット値の検査
- 白内障に関する眼の検査
- 皮膚の検査